研究内容
可視-近赤外光に反応する高量子収率の新規ナノ構造半導体光触媒の開発
半導体光触媒を用いたソーラー水素生産は持続可能なエネルギー開発の中核的コンセプトとして注目されている。なかでも太陽光のエネルギー分布の50%超を占める近赤外線は未利用のエネルギー源として重要であり、近赤外光照射に反応できる光触媒の開発が求められてきた。例えば、本研究で開発したAu@Cu7S4は可視光および近赤外線励起下で長寿命の電荷分離状態を維持した。さらにヨーク-シェル構造の利点を生かし、Au@Cu7S4は励起波長500 nmで9.4%、2200 nmで7.3%という記録的な量子収率を達成し、共触媒を必要としない水素生産において優れた性能を発揮した。

今回の研究成果では、自己ドープされた非化学量論半導体ナノクリスタルの局所表面プラズモン共鳴(LSPR)特性を利用して、広範なスペクトル駆動可能な光触媒反応の実現可能性が示された。この可視光および近赤外線応答型の持続可能Au@Cu7S4光触媒システムの開発により、太陽エネルギーのより効率的な活用や、水素などの再生可能なエネルギー源の生成が期待される。

陽極酸化法によるナノチューブの創製
陽極酸化法により、Ti-Nb-Ta-Zr-O のナノチューブを Ti-29Nb-13Ta-4.6Zr 合金板に修飾し、光電気化学水分解の新規な陽極としての可能性を見極める。 Nb、Ta、Zr の自己ドープ効果により、バンドギャップの狭小化、可視光吸収率及び導電性 を向上させ、フォトキャリアの電荷分離過程の効率と光電流の増大を引き出す。新規な光触媒のバックボーンとなるナノチューブ孔径や管壁厚は、水分解効率に影響を与えるため、 陽極酸化の条件を変えることによって最適な形態を見出す。そして、電気化学インピーダンス解析から、新規な Ti-Nb-Ta-Zr-Oナノチューブ可視光応答型光触媒の電荷キャリア移動機構を解明する。Ti-Nb-Ta-Zr-O ナノチューブは、光エネルギーを用いて高効率な水分解を実現する光触媒に応用可能である。従ってグリーントランスフォーメーションやゼロカーボン技術に強く寄与する。
